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とりあえず唐突に

「呼んだか?」
「お前ぶっとばされたいの?」
 その日彼は珍しく隊長室に呼び出されていた。
 頭の中でなんで呼ばれたのか理由を考えている彼と対照的に、反応が気に入らなかったのか、目の前に座る隊長は不機嫌な表情をしている。
「仮にもねェ。目の前にいるのは隊長だよ? この部隊で一番偉いんだよ!?」
「うるせェよのんべェ。この前も隠れて飲んでた事クラウン補佐官に言うぞ?」
 彼が脅しをかけると隊長はあっさり『すいませんでした!!』と机の上に飛び乗って土下座した。
 それを白い目で見つめながら来客用の長椅子に腰掛けた彼は口を開いた。
「それで? 話ってなんですか」
 このまま脱線しそうな流れをあっさりと戻した彼に対して隊長は『そうそう』と喋りながら机の上に正座したまま言葉を返した。
「今日からこの部隊におけるお前の配属先を変更する」
 そう切り出してニッコリ笑顔を浮かべた隊長に対し、彼は口が反応するよりも先に近場の灰皿を投げつけた。
「へぶほ!?」
 結果は100点ゾーンに大当たり、咄嗟の叫びを吐きだした隊長はそのまま綺麗に正座の姿勢のまま後ろに倒れ込んで行き、机の上だった為床に頭から落ちた。
「配属一年目で一週間どうしようも無いエゴで休まされた挙句人事異動だぁ!? 陸はこんなにブラックなのかよ!!」
 オウルは叫ぶと共に頭を抱えて蹲った。
 そう、彼は訓練校卒業と共に此処へ配属され、そして何故か配属一日目の後一週間休まされたのだ。
 その間彼は彼で様々な出来事があった訳だがそういった苦難を乗り越えて復帰した矢先にこれである。
 働きたい覚えたいと願う新入隊員としては当然の反応であろう。
「そ…そんな事言うなよ…今度配属させる場所ならお前自身も、持ってるデバイスも、100%力を発揮できるんだぞ!?」
 赤くなって鼻血を垂らしながら立ち上がった隊長の言葉に彼の表情がただの怒りから真剣な眼差しに変わった。
 唐突な変わりようを見た隊長は机の上に置いてあったティッシュで鼻を押さえながら得意げな口調で喋りだす。
「おっ? もしかして期待しちゃった? 心にズキュンと来ちゃった? まさかときめい…って、ごめんなさい。謝りますからテーブルは投げないで」
 彼はテーブルの淵に右手を掛けながら、隊長に続きを喋るよう促す。
 隊長は彼に促されて渋々続きを喋りはじめた。
「実はな。此処最近俺達が管理してる地域で色々と問題が発生してるんだ」
 隊長は其処まで喋り、一度鼻へティッシュを千切って詰めた後再び語り始めた。
「俺達が通常勤務で対応できるのなら別に良いんだが、どうも度を超えた問題が多くてな。陸の上層部や本局の方に報告したんだがうんともすんとも返してきやがらない」
 隊長は喋りながら頬を右手で軽く掻き、少し顔を引きつらせながら続ける。
「以前はこうも治安が悪いなんて無かったんだがどうしてこうなったか…とにかくだ。上がやらないなら俺らがやるしかない」
 言葉を一通り述べた隊長は頬を掻いていた右手人差指で椅子に座る彼の顔を指差して告げた。
「そこで白羽の矢が立ったのがお前って訳」
「ちょっとまてよ隊長。それは良いんだが俺一人じゃそんだけの大事どうにもならんぜ?」
 それまで清聴していた彼が此処に来て聞いた者なら誰でも頭に浮かぶであろう疑問を口にして立ちあがった。
 彼の疑問を聞いた隊長はにやりと口元に笑みを浮かべて『心配するな』と述べる。
「人選はしっかりとしてある。新人のお前一人で対応させないよ」
「そういやそうだ。なんでそんなに重要なことを新人の俺に向けたんだ? 慣れたベテランや中堅の皆さんを使えば良いじゃないか」
 彼のもっともな質問をまた受けた隊長は、胸を張って答えた。
「それは勿論俺のカン!!」
 




「あれ? お前隊長に呼ばれたんじゃないの?」
 隊長室を出て十数分。
 彼は廊下を歩いていた所、訓練校からの付き合いである通信士の友人に声をかけられた。
 友人の言葉を聞いた彼は『ああ…あれね』とジト目に成りながら言葉を紡ぎ出す。
「あれなら今頃芝生でおねんねしてるよ…」
 彼が友人に報告している時、ほぼ同時刻の隊長室ではデスクの後ろ張り付けられた窓ガラスが割れ、春のそよ風を部屋に呼びこんでいた。
 ちなみに主の姿は無い。
 そんなこんなで彼が報告すると友人は苦笑いを浮かべて言葉を返した。
「オウル…あまり酷くやり過ぎると隊から追い出されるぞ?」
 友人に名前で呼ばれた彼は『大丈夫、大丈夫』と軽く目を瞑って口元に笑みを浮かべながら答えた。
「そこまでなるほど酷くはやってないからさ…しかし、隊内での人事異動だってさ」
『人事異動?』と友人が聞き返すとオウルは首を縦に振って頷いた。
「それは随分と急な話だ。で、異動先は何処なんだ?」
 友人に質問されたオウルは『あっ』となにか思い出したような声を上げて目を開いた。
「そう言えば俺、異動先聞く前にぶっ飛ばしちまった…どうしよう」
 オウルの言葉に友人は溜息を吐いて口を開く。
「おいおいどうするんだよ…異動先が分からないんじゃどうにも…」
「それなら大丈夫さビリー」
 友人が喋っていると途中で別な声が割って入った。
 話を切られた友人とオウルは声の主に顔を向ける。
 其処にはなんとも爽やかな青年が立っていた。
「オウルの異動先は俺がいる所だから」
 青年が爽やかな笑みと共に言葉を放つとオウルが嬉しそうな表情で口を開いた。
「それってまさか、カシウス先輩は俺と同じ部隊ってことですか?」
 オウルが嬉しそうに言葉を口にするとカシウスと呼ばれた青年は『そうだよ』と述べて廊下の壁にもたれかかった。
「俺が一人目で君は二人目。現在の人数は二人だけど、ローアン隊長が人員に関してはスカウト済みって話だからその内増えるみたい」
 カシウスの説明を聞いたオウルはゲンナリとした表情になり彼に告げた。
「なぁ先輩…どうしてうちの隊長はこうも行き当たりバッタリなことばかりやるんだ?」
 オウルの質問にカシウスは笑顔を崩さず答えた。
「長年の感って奴じゃないかな…長くこの隊にいるけどあの人の感ってなんでか外れないから俺は信じてるけどね」
 ローアンが隊長室で喋っていた答えと同じものを返されたオウルは、ゲンナリとした表情を更に深くした。
 彼の顔を見たカシウスは『ハハハッ』と軽く笑い飛ばしながら再び口を開いた。
「まぁなにはともあれ、自分の部署の仲間第一号と言うことで喜んで歓迎するよ」
 喋った後カシウスは左手をゲンナリしているオウルに向けて差し出して告げた。
「112陸士部隊、現場維持担当『実働部』へようこそ。歓迎するよ。オウル・プリヴェント君」
 カシウスの唐突ともとれる紹介と歓迎に、オウルは少々戸惑った。
 だがそんな彼の背中をビリーが軽く叩く。
 しっかりしろというメッセージだろう。
 背中を叩かれたオウルは、一呼吸置いて戸惑いを拭い去り、顔に笑顔を浮かべてカシウスが差し出した手をしっかりと握る。
「出迎え感謝します!! 色々と足りぬ部分もありますがこれからよろしくお願いします」
 彼が答えるとカシウスも満足げにうなずき、ビリーも『うんうん』と納得の表情で首を縦に振った。
 固い握手が交わされ、いよいよオウルの物語が始まるのかと思われたその時、彼の頭に少女の声が響く。
『オウル…』
 少女の声は悲しそうな雰囲気を漂わせながら彼の名を呼ぶ。
 それに気付いたオウルはカシウスの手を離し、辺りを見回してから再び彼の方へと顔を戻し呟いた。
「すいません先輩。俺ちょっと急用あるんでこれで」
「ん? そうかい? じゃあ勤務は明日からだからお互いに頑張ろう」
 オウルは彼にお辞儀をするとそのまま廊下を走って何処かへ行ってしまった。
「行ったか…」
「行きましたね」
 彼がいなくなった後、残った二人は会話を始める。
「フィーリアちゃんとはその後どう?」
「順調です。今度はアイツと一緒に歩く為に努力中って感じですかね…」
 カシウスの問いを聞いて、ビリーは少し恥ずかしそうに笑いながら返答した。
 彼の反応を見たカシウスは、一瞬表情を曇らせた後、小さく口を開いて彼に告げた。
「その言葉…絶対に護れよ?」
 今までの爽やかな口調とは対極的な、冷たく粗暴とも取れる呟きをビリーは確かに聞いた。
 だから彼は唐突な変化に驚きの表情を浮かべたが、その時には元のカシウスに戻っていた。
「あっ…はい」
 真実を知るタイミングを逃したビリーには素直に頷く選択以外残されておらず、彼は素直に返事をして頷いた。
 ビリーの返答に満足したカシウスは納得の笑みを浮かべると、彼に背を向けて口を開く。
「じゃあ俺、これから色々準備あるから行くね?」
『ばいば〜い』と告げたカシウスは、ビリーに有無を言わせる事無くその場から去って行った。
 残されたビリーは別れるまでの手順のあっさり感以上に、一瞬見せられたあの冷酷な表情が気になって仕方が無い。
「あれは…あの違和感は一体…」
 それからビリーは暫く、その場に立ち尽くしたままもの思いに耽っていたと言われている。
 彼がそのような謎に苛まれていた時、廊下を暫く走ったオウルは人が見えなくなった辺りで軽く物陰に隠れると、小さな声で『もう良いぞ』と呟いた。
 するとどうだろうか、陰に隠れたオウルの右側に白く透明に透き通った少女が、銀色の長髪を軽く揺らしながら現れた。
「人と話してる最中は唐突に喋りかけてくるなって言っただろ?」
 オウルが出てきた少女に告げると彼女はその小さめの唇を少し尖らせて、一目で可愛いと言われる程の顔を曇らせた。
「だってさ、あまりにも唐突に進み過ぎてなにがなんだか分からなくなっちゃったんだもん」
 拗ねた顔も可愛いなとかさりげに思いながらオウルは自分の頭を軽く掻いてから答えた。
「それは俺も同じだよ。向こうでロストロギアとか言う得体の知れないもんに遭遇して、やっと戻ってこれたと思ったらこれだ…なにがなんなのやら」
 彼の言葉を聞いて一週間前のことを思い出したのか、少女も疲れた表情になる。
「あの時は大変だったね。オウルとお友達二人と、確か同じ管理局の魔導師さんでようやく封印出来たんだものね」
「全くだ。あのバッテンみたいな髪止めやってた女性局員さんがいなきゃどうなってたか…想像したくないな」
 彼女の言葉に答えたオウルは両腕を組んで恐ろしいと言った表情で身震いした。
 そんな彼と彼女の会話に別な声が割って入る。
『貴方が弱いからあそこまで危なかったのです。身に染みたのなら強くなることをお勧めします…最もこれ以上の伸びしろは見えませんがね』
「んだと、このボンクラデバイス!! 焼却炉に叩きこまれたいのか!!」
 オウルは声に反応するように右ポケットへと手を突っ込み、銃の紋章が刻まれたペンダントを取りだして怒鳴った。
 すると彼の声に反応するようにペンダントが赤く光りだす。
『なにを言いますか!! 私は事実を述べてるんですよ? ただでさえ無茶苦茶な貴方の補佐だけで内部回路が悲鳴を上げていると言うのに…』
 ペンダントが流暢な言葉で彼に合わせて話す。
 それには往来のデバイスのような機械的部分、単調な会話と言った側面が一切なく、眼を瞑っていれば人間同士の会話と間違う程の自然味を持ち合わせていた。
 そんなペンダントにオウルが再び言葉を返し、いつも通りの口論が始まる。
 一人と一機の口論をすぐ隣で見ていた少女は言葉に出しづらい状況だった為、心で念じる念話を使ってオウルに言葉を伝えた。
…あはは、なんだろう。まだ見慣れてないけどオウルとブリジットって、仲が良いコンビなんだね…
「誰が仲良いコンビだ!! 約束がなきゃコイツなんて即破棄だぞ破棄!!」
 念話の少女に対してオウルは口論の勢いそのままに声を張り上げて反論する。
 彼が突然見当違いな一言を放った為、ブリジットと呼ばれたデバイスは唐突に溜息とも取れるアクションを赤い光の光度調整等で表し言葉を紡いだ。
『私が調整を受けているあいだ、貴方は遂に幻覚が見えるようになってしまったのですか? それとも寂しすぎて独り言が大きくなってしまったのですか?』
「違うわい!! てかなんで独り言喋るくらい寂しがらなきゃ成らねえんだよ。お前なんぞいなくてもなんともないやい」
 一人と一機の言い合いは延々と続く。
 止める者がいなければこれはひたすら続くのだろう。
 傍から光景を見ていた少女は、こんなに言い合う彼等と戦闘における彼等のギャップに少々恐ろしさを覚えるが、それもまた一つのコンビの形なのかと考えることにした。
 そう考えた彼女は、不意に自分のおかれた現状を考えてしまい心と表情が沈む。
「私は……やっぱりオウルが羨ましいな。友人に囲まれる嬉しさを味わえるオウルが…」
 二人が言い合っているのを傍から一人見つめながら、誰にも気付かれる事無く少女は、一言呟くのだった。
 

 貴方はもし、約束と自分自身と世界のどれか一つを取れと言われたのならどれを取りますか?
 これは選択を迫られながら最後まで諦めず可能性を探し求めた者達の物語である。
 リリカルなのは外伝『梟戦記』始まります
 

テーマ : 創作モノ
ジャンル : その他

今日からブログを始めました

というわけで宜しく!!

sts0879@yahoo.co.jp これ俺のヤフーメアドなんで感想やらなんやら送ってねぇ
プロフィール

Author:千石遥
こんばんは、
此処はなのは×オリジナルのSSを挙げております。
オリキャラ重視の形をとったSSとなっておりますので、そう言ったものが苦手、と思われる方は、ご自由にご退出を。
暇つぶしくらいに良いかな? と思われた方は、どうぞ。

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